☆ 年金は十分か? ☆


 50を過ぎると年金が気になってくる。たいていの大企業では50台の社員向けにセカンドライフセミナーみたいなことを実施して、定年後どれくらい年金があれば不自由なく暮らしていけるか説明してくれる。セミナーを受講した知り合いに聞いたところ、夫婦二人で月額35万円の年金があれば十分に暮らしていけるそうだ。詳しいことは分からないが、知人は企業年金と厚生年金を合わせて月40万円程度貰えるようで、すっかり気が大きくなっている。だが本当にそれで十分なのだろうか。

 バブル崩壊以降、デフレが続き、規制緩和の成果で安売りショップなどが大量進出して消費者物価は安定している。どうもセミナーの説明ではこの状況が続くと想定しているようなのだ。

 だが長期的に見るとそうはいかない。欧州各国で実施されているインフレターゲットの導入、消費税の引き上げ、中国とインドを中心とする発展途上国の経済成長に伴う食糧価格の高騰、医療費負担・介護負担の増加、こういう事態は避け難い。要するにいつまでも物価上昇率ゼロは続かないし、少子高齢化と財政悪化で負担は増えてくる。

 そうなると、私の勝手な予想だが、20年後には月額35万円では十分な生活はできず、たとえば月額45万円くらいが一つの目安になるのではないだろうか。そうなると知人ですらぎりぎりの生活になる。中小企業や業績不振の企業の退職者は貯金と資産が十分にないと、病気になっても医者に掛かることすらできなくなる恐れがある。

 そもそも企業年金は確固たる保証があるわけではない。勤めていた企業が倒産すれば年金もなくなる。他の会社に吸収されても年金が途絶えることが多い。父親がそうだった。

 1億円を超える貯金や資産がないと、老後の安心は保証されない。だが定年時に1億円以上の貯金がある人は僅かだろう。結婚年齢が遅くなり、定年の時にはまだ子供が小学生などという人も少なくない。

 社会保険庁の不祥事が騒がれているが、問題はもっと遥かに深刻だ。年金記録の不備の解消くらいでは抜本的な解決にはならない。労働は悪いことではない。だが死ぬまで会社で扱き使われるのは御免だ。


(H19/10/6記)


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