エクセル2007に計算間違いを起こすバグが発見された。すべての分野でコンピュータに頼りきっている現代社会、エクセルのような世界中で使われているソフトにバグがあって計算間違いをしていたら影響は計り知れないものがある。 日本のGDPは2%増と公表されたが実は2%減だった、毎月15万円もらえるはずの年金が10万円しかもらえない、逆に20万円もらった、などという事態が発生しても誰も気がつかない。こんなことになったら世界は大混乱になる。コンピュータ社会とは巨大なリスクを負った社会なのかもしれない。 だが本当にそうだろうか。こんな社会を想像してみよう。定年退職して年金暮らしの二人の老人がいる。本当は同じ額の年金が貰えるはずだった。ところがソフトのバクが原因で、一人は5万円多くもらい、一人は5万円少なくもらうことになってしまう。この二人が出会いこんな会話を交わす。「年金が少なくて生活が苦しいなあ。」、「そうか、僕はなんだか余計にもらっているような気がする。そうだ、毎日夕食は僕にご馳走させてもらえないだろうか。」、「そうかい、悪いなあ、でも折角だから、お言葉に甘えることにするよ。」人々が皆これくらい大らかで心優しければ、コンピュータが計算間違いをしても大した問題にはならない。お互いに助け合って暮らしているから困る者はいない。 人間の本性について性善説と性悪説なる二つの説がある。人間の本性が善か悪かは善という言葉の定義に依存するからこういう議論は余り意味がないと哲学者は教えるが、強いて言えば、人間の本性は悪だと考えた方が現実に近い。人間は自分勝手で狡賢い。だからこそ、人々は却って公平で精確であることを執拗なまでに追い求める。その結果発明したのがコンピュータという間違いを犯さない(はずの)機械なのではないだろうか。 コンピュータは人間知性の輝かしい記念碑だと称賛する人がいるけれど、私には人間の猜疑心と狡猾さの象徴のように思えるのだが、如何なものだろう。 了
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