☆ 10円で悩む ☆


 自動販売機で100円玉を入れて90円の飲み物を購入する。つり銭受けに手を入れるとなぜか20円ある。前の人が忘れていったに違いない。こういうときどうすればよいか、気が弱い私はすごく迷う。

 勿論一番良い方法は警察に届けることだ。ところが近頃数が減ったのか、交番が近くに見当たらない。昔は駅前には交番があるのが普通だったが、今はNOVAに取って代わられている。10円とは言え、ネコババするのは気が引ける。良心が痛むだけではない。落とし主が警察に届け出たら私は窃盗犯になる(ような気がする)。10円で犯罪者にされるの嫌だ。

 こうして気の弱い私は10円をつり銭受けに戻して、そそくさとその場を立ち去ることになる。だが、それでも気になる。次に自動販売機で飲み物を買う者は図々しく10円を自分の懐に入れるに違いない。10円でびくびくするのは私くらいなのだ。それならば私が持っていったほうが良いではないか。

 交番はないが、コンビニだったらどこにでもある。コンビニにはたいてい募金箱が置いてある。そこに入れるのはどうだろう。お釣りを取り忘れた者にも責任がある。10円くらいならば、それをコンビニの募金箱に入れても罪にはなるまい。いや、それでも法的には犯罪になる可能性がある(ような気がする)。

 困った。どうすればよいのだろう。堂々と?自分のものにすればよいのか。駄目だ。良心の痛みは10円では癒されない。

 そうだ!コンビニで拾得物預かり業務を開始すればよいのだ。そうすれば私はコンビニに10円を置いていく。半年しても持ち主が現れない場合は寄付金として使ってもらえばよい。

 コンビニの業務としては割が合わない。法的にも問題がありそうだ。だがコンビニは儲かっていると聞くし、「コンビニ」という名前なのだから、気の弱い小市民のメンタルヘルスのためにもこういう業務をぜひ遣るべきだ。そうすれば私の悩みは解消する。


(H19/7/21記)


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