☆ 真価が問われる早稲田野球部 ☆


 人気はとにかく、早稲田のエースは3年生の須田だ。強豪の法政、明治をいずれも完封している。斉藤はさすがに甲子園の優勝投手、しかもあの楽天の田中と投げ合って勝った投手だけあって、1年生離れした投球術を見せる。事実早くも3勝しリリーフでも活躍している。だが、その内容は須田には遠く及ばない。運が味方してのこれまでの成績と言うべきだろう。

 ところが、開幕戦に続いて、優勝が掛かった早慶戦の第1回戦でも斉藤の先発が有力だと噂されている。もちろんまだ決まったわけではないが、もしそうなれば明らかにおかしい。

 大学野球の人気が盛り上がれば、日本野球界全体にとってもファンの裾野が広がり望ましい。だが学生野球はプロとは違う。人気目当てで投手のローテーションを変えたりするのはアマチュア精神に反する。

 開幕戦で斉藤を先発させたのは大観衆の中で投げてきた実績を買ってのことだと早稲田の應武監督は説明した。だが人気目当てであることは隠しようもない。これで早慶戦の第1回戦でも斉藤が先発するようならば、これはもうアマチュア野球とは言えない。斉藤をメインとするバラエティーショーだ。勿論監督は大試合での勝負強さを買ったと開幕戦と同じような説明をするだろう。だがもしそうならば斉藤で負ければ早稲田は2回戦が苦しくなる。プレーオフに出られるとは言え負けられない試合になるから、先発が予想される須田のプレシャーは厳しくなる。斉藤の方が大一番に強いと言うのであれば、寧ろ2回戦に斉藤を残しておくべきだろう。

 背後にはテレビ局の意向も見え隠れする。第1回戦で早稲田が勝ち、優勝が決まってしまえば、如何に斉藤が登板しても第2回戦は盛り上がりに欠けることになる。それを考えれば、たとえ負けても斉藤を第1回戦に先発させた方が放映するテレビ局にはメリットがある。今のところ6月2日の日本テレビの番組表には早慶戦の中継は予定されていないが、番組が変更になる可能性は残されている。

 早稲田は学生野球の王道を守り、第1回戦はエースの須田を先発させるべきだ。そして斉藤は第2回戦の先発か、第1回戦でリードしている場面で須田にリリーフが必要になったときに使う。これでこそ本当の学生野球だ。

 斉藤人気で人々の記憶から薄れているが、早稲田野球部では部員が西武から金銭を受け取っていたという不祥事が明るみに出たばかりだ。部員は退部して責任をとったが、他にも野球部関係者の関与があったと一部で報じられていたにもかかわらず、十分な調査がなされることなく有耶無耶にされた。数年前まではプロからアマの有力選手に金銭を渡すのは常識だったと言われておれ、この問題をいつまでもとやかく言うつもりはない。だが早慶戦第1回戦で誰を先発させるかで、早稲田野球部の真価が問われていることは忘れないでもらいたい。


(H19/5/29記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.