☆ 正直が一番 ☆


 松岡農水相が自殺した。疑惑があり釈明も不十分だったが、そこまで追い詰められていたかと思うと気の毒だ。冥福をお祈りしたい。

 事務所費の内訳を公表せよと迫られ松岡氏は拒否した。正直に話せば拙い部分があったのだろう。だが同じようなことは他の政治家もしている。善し悪しは別として気に病むほどのことではなかった。本当のことを話しておけば、閣僚の座は退くことになっても自らの命を絶つという最悪の事態は避けられたと思う。

 正直者は馬鹿を見ると言われるが、それは貧しく暗い時代の話しだ。そういう時代には正直者が飢えたり、権力者に迫害されたりすることは珍しくなかった。人々にとって嘘は生きるための知恵だったと言える。だが今はそんなことはない。嘘を吐いて地位や富を得てもいずれ心が苦しくなる。今の世の中、偉くなれなくても食うには困らない。心穏やかに暮らすことが出来るから正直が一番だ。

 ところが人間なかなか正直になれない。ほんの一寸のことで嘘を吐く。ほんの一寸のことが正直に告白できない。

 おそらく人間は嘘を吐く動物なのだ。他の動物でも敵や獲物の目を欺くためにあの手この手を使うから、人間の嘘を吐く能力もその延長線上にあると言ってよい。特に生存競争が厳しいときには嘘を吐く能力が高いほど生存に有利だったと思われる。

 だが現代においては嘘を吐く能力は大して重要ではない。寧ろ精神活動が必要以上に高まり、欝やパニック、強迫観念に襲われることが重大な社会的問題になっている現代、正直が何よりも健康のためになる。

 ところが残念なことに嘘を吐く能力は未だに淘汰されていない。そのために正直になれず皆苦労をしている。筆者とて同じだ。

 松岡氏の悲劇を教訓にして皆もっと正直になるように努めたほうがよい。誰も嘘を吐かなくなれば、いずれ嘘を吐く能力は淘汰される。尤も、貧しい国や独裁国では、依然として嘘を吐くことは不可欠な能力だろう。世界の人々が協力して、富の公平な分配を実現して民主的で人権が尊重される世界を作ることが何よりも大切なことは言うまでもない。


(H19/5/29記)


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