☆ 青島幸男氏を悼む ☆


 直木賞作家で前都知事の青島幸男氏がなくなった。享年74歳、心から冥福をお祈りする。

 青島氏は都市博を中止しただけで、後は官僚の言いなりで何もしなかったと批判する人がいる。だが都庁の関係者の声を聞くとそんなことはないと言う。青島氏は都政改革、都民のために政治を実現しようと奮闘した。しかし如何せんブレーンがいなかった。知事がただ高邁な哲学を語っているだけでは都政は滞ってしまう。知事の決裁を待っている案件が山ほどあるのだ。結果、青島氏は官僚の軍門に下るしかなかった。氏が2期目に立候補しなかったのは自分の非力を悟ったからだろう。潔い進退だったと評価したい。

 青島氏は選挙運動をしなかった。それを知名度に胡坐をかいた怠慢だと非難する者もいる。だが出所不明の膨大な選挙資金を注ぎ込み、ばら蒔き行政を約束して組織票を集める政治家がいまだに後を絶たない現実をみるとき、青島氏の姿勢は、既成の政治や選挙とは全く異質なそれが可能であることを示したという点で高く評価してよい。

 確かに、青島氏は有能な政治家だったとは言い難い。如何に優秀でも、如何に高潔な人物でも、トップに立とうとする者はブレーンとなる有能な補佐役が不可欠だ。まさか本当に当選するとは思っていなかったのかもしれないが、本気で都政改革を断行するつもりだったのならば、事前にブレーンを作っておく必要があった。しかし、氏は、それを怠り、また、そもそもブレーンの存在が不可欠であることを十分に理解していなかった。

 とは言え、そういう青臭いところも氏の魅力だった。本当は彼のような政治家を一流の政治家に育てる選挙民、都民がいることが一番よい社会なのだ。

 功罪相半ばするが、政治家青島幸男の存在がユニークで、政治のあり方を変えるヒントを与え続けていることは間違いない。そのことを肝に銘じ、改めて氏の冥福を祈りたい。


(H18/12/20記)


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