☆ セキュリティだらけ ☆


 個人情報保護法の制定、情報漏洩事件、凶悪事件の頻発、そんなこともあって誠に最近はセキュリティが厳しい。社員でも出向者は本社ビルや工場には届け出なしでは入ることができない企業が増えている。昔は営業担当者がアポなしで顧客を訪問することができたものだが、今はよほど親しい付き合いでないと無理だ。そもそもこんなにセキュリティが厳しいと、親しい付き合いもできないだろう。

 インターネットの普及で、セキュリティが甘いところからは容易に大量の情報を盗み取ることができるようになり、盗んだ情報をばらまくことも簡単になった。携帯できるフラッシュメモリの大容量化で、安易な管理をしていると数百万という顧客情報が簡単に盗まれてしまう。悪意がなくとも、大量の顧客データを収納したフラッシュメモリを紛失して、それを拾った者が利用することもある。こういう状況では、セキュリティが厳しくなるのも無理はない。

 人々のプライバシー意識の高まりも見逃せない。昔は自宅の住所や電話番号など外に漏れても別に構わないと考える人が多かったが、今は違う。会社の緊急連絡先のリストにも住所や自宅電話番号を掲載することが拒否されることがある。緊急時に支障が出るので、やむなく携帯電話を貸与して自宅まで所持するように指示したら、その携帯に収納されていた(本人も含めた)個人情報が漏洩してしまったなどという笑えない話しも起きている。

 こんな状況だから、企業や個人がセキュリティに関心を持つのは当然だ。だが正直言って、余りにもセキュリティに拘りすぎだと思う。危険物や重要機密情報が保管されている場所は別としても、オフィスなどは基本的に誰でも自由に出入りできるようにするべきだ。さもないと、ただでさえ希薄になりつつある人間同士の直接的な触れ合いの機会が失われ、やがて些細なことで壊滅的な状況を招く脆弱な社会が到来してしまう。

 無菌状態で育った動物は免疫系が十分に発達せず感染に弱いだけではなく、無菌状態ですら健康を維持することができない。常にある程度は異物と接しており、ときには軽い病気に罹ることが各個体の健康に欠かせないように、社会も常に一定水準のリスクと接していることで健全になる。

 いずれにしろ、セキュリティ強化に膨大な労力と資金を費やすよりも、善良な人間を増やす工夫をした方がよいことだけは間違いない。


(H18/11/24記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.