☆ ハテナ? ☆


 和歌山県の砂浜から、筑波大学の研究チームの手で、光合成する植物と捕食動物の両方の機能を併せ持つ単細胞生物が発見され、「ハテナ」と命名された(10月14日付けサイエンス誌)。この地球には私たちの知らない世界がまだまだたくさん残されているようだ。

 昔からよく思っていたのだが、もし人間の細胞に葉緑体を組み込み光合成ができるようになったらどんなに素晴らしいだろう。飢餓で苦しむ人はいなくなる。太陽光と二酸化炭素、土壌や水中に存在する燐や窒素化合物さえあれば生きていくことができる。ただ、それだけでは日々の生活が味気ないものになってしまうだろうから、時々は口から物を食べて味覚を楽しみ、友とともに人生の喜びを語り合う。あくせくすることなく、セネカが勧めたように、夜は神の真理を思索して過ごす。こうして、人々は長くて有意義な人生を送ることができるようになる。

 少なくとも戦争はなくなる。陽が出ている間、人は皆、地面で寝そべって光合成をしなくてはならないから戦争はできない。いや相手が寝そべっている間に攻撃を仕掛ける者が出てくるかもしれないと心配する人もいるだろう。だが、そんなことをしたら、攻撃した側は報復を恐れて二度と枕を高くして光合成をすることができなくなる。だから最終的には誰も他人を攻撃せず平和共存することになる。

 クローンを作ることができるのだから、葉緑体を組み込むこともできないはずはない。尤も、こんなことを言うと、専門家に笑われるかもしれない。植物は、細胞分裂のときに核の遺伝子だけではなく葉緑体もコピーしなくてはならず、動物よりも大きなエネルギーが必要になる。だから植物は動物のような運動能力や知能を持つことは出来ない。従って、植物の機能を持つ人間を作ることなどできないだろう。こう指摘されそうだ。

 だが、果たして本当にそうだろうか。広大な宇宙には光合成をして生きている知的生命体が存在していてもおかしくはない。いや、ハテナの存在は、地球上でもそれが不可能ではないことを示唆している。

 実現可能かどうかは別にしても、光合成を行なう植物型人間(人間型植物?)だったら、どんな社会を作るか、どんな暮らしをするか想像してみるのは面白い。案外、現代社会の諸問題を解決するよい手掛かりが見つかるかもしれない。


(H17/10/16記)


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