発信者電話番号を偽装して自宅からだと思い込ませ振込みをさせる振り込め詐欺が横行している。初めはそんなことはできないと言っていた通信会社もできる場合があることを認めて対策に乗り出した。 真似する者がいると困るからか、その手口の解説は余り目にしない。どうやら、海外のコールバック事業者を経由して発信電話番号を偽装しているらしい。コールバック事業者には発信電話番号を自由に設定できるサービスを提供しているものがあり、それを利用して騙す相手の自宅の電話番号を事前に設定しておく。コールバック事業者経由で電話をすると自宅の電話番号が携帯のディスプレイに表示されることになる。 通信経路と発信者電話番号をチェックすればこういった違法な通信を遮断することはできる。とは言え、通信会社とすればシステムの改修が必要だから迷惑な話しだ。尤も、こんな違法行為が可能な通信ネットワークを構築した通信事業者にも非があるという意見もあろう。だが、国際的に合意された規約に従ってネットワークを構築してきたのだから、通信会社が悪いとは言い切れない。 コールバックは、10年ほど前に国際通話が格段に安くなると話題になり、一時期日本国内でもかなり普及した。その後、競争激化とIPの普及で国際通話料金が一挙に下がり、日本ではほとんど消えてなくなったが、しっかりと生き残っていたわけだ。ただし、別にコールバック事業者が振り込め詐欺に加担しているわけではないから、違法だと非難することはできない。尤も、発信者電話番号を自由に設定できることには問題がある。 それにしても、詐欺グループには、通信ネットワークの盲点を突くことができるすこぶる優秀な知能犯がいることになる。NTTですら、最初は発信者電話番号偽装などできないと主張していた。しかも、都合の悪いことを隠そうとしていたのではなく、本当にできないと信じていたのだ。詐欺グループは、超一流大学出身者からなるNTTのエリート技術者集団の上を行っていたわけだ。(詐欺グループが日本人なら)まだまだ日本人も捨てたものではない? だが、ハッカーやウィルスの作成者も含めて、こんな素晴らしい知恵を持っているのに、どうして、悪いことではなく世の中の役に立つことに使わないのか。捕まれば罪に問われることは間違いなしだから、知恵があるだけではなく度胸もある。これだけの素質があれば、まっとうなことで、社会に多大の貢献をして、人々の尊敬を勝ち得ることができるはずだ。 悪に強い人間は善にも強いと言われる。知恵も勇気もなく善にも悪にもなれない筆者のような半端な人間には羨ましい限りだ。是非、悔い改めて善人の道を歩いて欲しい。もし、君たちが才能を発揮するのを世間が邪魔しているのならば、詐欺などという手段で反抗するのではなく、インターネットを使って、堂々と日本社会の旧弊を批判すればよい。多くの日本人が共感するはずだ。 了
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