テレビ視聴率のランキングを見ていると疑問を感じることが多い。 テレビ朝日で放映中の「電池が切れるまで」はとても良い番組だ。幼くして重い病気に罹った少年少女たちが運命に負けることなく一生懸命に生きる姿を、(病院内に設置された)院内学級を舞台に描いたドラマで、命の尊さを教えてくれる。子役達は可愛く切なく、院内学級の先生役の財前直美の演技も好感が持てる。だが視聴率は1ケタ台を低迷している。 その一方で、某局の「・・法律相談所」なる番組が視聴率ランキングのトップに立っている。これは、放送開始当初こそ真面目な法律番組という趣きもあったが、今では完全に「法律」を肴にしたお笑い番組だ。レギュラーの弁護士4名が様々な法律問題に法的見地?から解答を与えるのだが、視聴者に正しい知識を伝えることではなく、面白い解答をすることが目的になっている。こんな番組を幾ら見ても、法律を誤解するのに役立つことはあっても、正しく理解することには役立たない。だが、この番組の視聴率は常に10%台の後半から20%台だ。 こういう数字を目の当たりにすると、テレビ視聴者のレベルの低さを指摘せざるをえない。尤も、筆者に他人を責める資格などない。最近深夜のお色気番組の露出度が低いと嘆いているくらいなのだから、最低レベルだ。実は「・・法律事務所」もよく観ている。 しかし、テレビが人々に与える影響は大きい。良質な番組が、視聴率が稼げないという理由で、老若男女誰もが観るチャンネル・時間帯から排除されることは大変な損害だ。低俗なお笑い番組やエロ番組は、それ専用のチャンネルで深夜にでも放映してもらえればよい。少なくとも子供たちが起きている時間帯には良質な番組を放映するべきだ。 そのためには、制作側だけではなく、視聴者やスポンサーのレベル向上が必要だ。たとえ面白くとも、内容が低俗でこんな時間帯に流すべき番組ではないから観ないというくらいの心意気、やせ我慢が必要だ。スポンサーも視聴率ではなく番組の質で広告料を決めるくらいの見識を持ってもらいたい。 低俗な面白さは所詮泡銭みたいなものに過ぎず、すぐに消えてしまう。そして、より強い刺激を求めることになるのだが、その結果、どんどん感性が鈍ってバカになっていく。逆に、良質な番組は最初見たときはピンと来なくても、何度か観ていると良さが分かってくる。そして、長く心に残り知性と感性を豊かにしてくれる。 ただ、良質な番組ほど最初は手強い。優れた思想書ほど最初が困難であるのと同じだ。調子が上がるまでにある程度時間が掛かる。忙しい現代、それまで待っていられないという人が多いかもしれない。だが、冷静に観察すれば意外と時間はあるものだ。くだらないことに時間を費やすから時間がないように感じる。良い番組を探して、最初は余り面白く感じなくても少しばかり我慢して続けて観てみるとよい。そうすれば、面白さが分かってくる。そのとき、自分も少しばかり豊かになっているはずだ。 了
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