生存中の人で世界一頭のよいのは誰か。「この私だ」と言いたいところだが、冗談にもならないから止めておく。色々な名前が挙がるだろうが、「それはエドワード・ウィッテンだ」と言う人が一番多いのではないだろうか。 この世界は4つの相互作用で出来ている。重力相互作用、電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用の4つだ。この4つの相互作用をすべて包含する物理理論を究極理論(Theory of Everything)と呼ぶことがある。この理論が完成すれば、原理的には森羅万象をすべて説明できるからだ。 現時点で、究極理論の最有力候補は、超対称性を有する紐として素粒子を記述する超弦理論と、そこから発展したM理論だ。超弦理論とM理論に画期的な貢献をした男が1951年生まれのアメリカの物理学者エドワード・ウィッテンだ。 会ったことがないから、どのくらい凄いのかは分からない。大学時代は歴史を専攻していて物理学を趣味で遣っていたそうだから、相当な変わり者であることは間違いなさそうだ。 しかし、様々な分野学問に首を突っ込んできた自称学問オタクの筆者にとって、ウィッテンの理論ほど、完全無欠に理解できなかった理論は他にない。アインシュタインの一般相対性理論は難解な理論の代表と言われるが、球対称の重力場で一般相対性理論を解いて、シュバルツシルドの解を導くくらいまでなら何とかできる。(かなり見栄を張っている。)だが、ウィッテンの理論は最初から最後まで何がなにやらさっぱり分からない。だから、きっと途轍もなく凄いのだろう。 ウィッテンの専門は物理学だ。だから、いずれ、ノーベル物理学賞を取るだろうと思う人がいるかもしれないが、あにはからんや、多分取れない。ウィッテンの物理学への貢献は超ノーベル賞級なのだが、理論家がノーベル賞を取るには、実験や観測で理論の正しさが証明されなくてはならない。ところが、M理論は余りにも凄すぎて、とうてい実験や観測では証明することができそうもない。証明するためには宇宙を丸ごと一つ作るくらいのことが必要なのだが、これは神様のみに出来ることで人間などが手の出せることではない。 つまり、ウィッテンは神の申し子なのだ。きっと天国でノーベル賞をもらうだろう。 尤も、1990年(当時39歳)に数学のノーベル賞であるフィールズ賞を受賞している。やはり凄いぞ、ウィッテン。と言うか、人間も捨てたものではないと言うべきか。 了
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