☆ 竹内久美子さんの楽しいトンデモ本 ☆


 竹内久美子さんの本が売れているらしい。とんでもないことである。一見、生物学の最新理論に基づき科学的な議論を展開しているような振りをしているが、実際はいいかげんで独断的な議論ばかりである。いわゆるトンデモ本の典型だ。トンデモ本に真面目に反論することは無益である。だから、私もトンデモ本風に反論してみたい。

 竹内さんは、最新本で、美人を男が好むのは遺伝子の戦略に合致するものである、美人は美人でない女より生殖能力が高いと断定している。とんでもない暴論である。別に私は不美人を擁護したいわけでない。本音を言えば擁護したくない。私は、竹内理論は間違っていると言いたいだけだ。そして、それは容易に証明できる。

 人間は、食糧事情が良くなると繁殖率が下がる唯一の生物種である。細菌や酵母のような単細胞生物から類人猿やイルカのような高等動物まで、人間以外のすべての生物種は食糧事情が良くなると繁殖率が高くなる。だが、人間は逆である。先進国は少子化、人口減少に悩み、発展途上国は人口爆発に悩んでいる。人間は食糧事情が良くなればなるほど繁殖率が下がるのである。  繁殖率が下がる原因として考えられることは二つしかない。食糧事情がよくなると生殖行動が少なくなるというのが一つだ。もう一つは、食糧事情がよくなると生殖能力が低い異性が好まれるようになるというものだ。

 先進国の現状、すくなくとも、日本の現状をみれば、最初の可能性は排除される。現代の日本人が、昔より生殖行動に興味を失った、生殖行動の回数が減ったということは考えられない。むしろ、増えているはずである。特に、女子高校生の生殖活動の増加は著しい。発展途上国の人口増加をはるかに超える勢いだ。お陰で、いまや、日本で最大の性病菌保有プールは女子高校生であるとまで言われている。
 人工中絶や避妊道具の普及が妊娠を減らしていると考える人もいるだろう。しかし、昔も、今のように洗練した方法ではなく粗雑で危険な方法であったが、中絶や避妊はおこなわれていたのである。
 だとすると、残る答えは一つで ある。男性も女性も、生殖能力の低い異性を、それとしらず選択しているために、繁殖率がさがっているのだ。これが、先進国の人口減少の理由だ。竹内理論は間違っている。

 巨乳ブームである。最近の男は、巨乳の女性が大好きである。一昔前までは、アイドルの条件は胸が小さいことだった。河合奈保子さんは、胸を小さく見せるために、さらしを巻いて締め付けていたと言われている。ところが最近のアイドルは、脇から肉を寄せて胸の谷間作りに懸命である。某アイドルはテープで寄せていると言っていた。(アイドルは大変な職業である。若くして高い収入を得ることを妬む人がいるが、正当な対価を得ている。)
 しかし、乳房の大きさと子育て能力とは全く無関係である。母乳の量は乳房の大きさに比例しない、どちらかと言うと反比例する。巨乳を好むのは、男の生殖本能がおかしくなっている証拠だ。女性もおかしくなっている。顎の細い女性的な顔の男性を好む傾向が強くなっている。鰓の張ったガッシリした顎をもつ男性、靴でも噛み砕いて食べてしまう男性、こういう男性こそが、生命力が強く生殖能力も高いはずだ。だが、いまや、そういう男は嫌われる。
 古代の埴輪をみると、女性の理想像は三段腹であることが分かる。子供をお腹にいれて働くためには、脂肪をたっぷり蓄えなくてはならない。男の生殖本能が正常に機能していれば、よく食べ、よく動き、三段腹で二の腕の太い巨尻の女性がもてるはずだ。
 昔は「尻軽女」という言葉があった。尻軽女は軽蔑されていた。尻が軽い=尻が小さい女性は生殖能力が低いので敬遠されていたことを如実に物語っている。

 このように、生殖能力が高い女性が美人として認知されるという竹内さんの考えは全くの間違いである。顔の小さい女性、細面の女性、ウエストの細い女性は生殖能力が高いというのも根拠のない偏見である。結論が先にあり、その結論を導くためにデータを適当に改竄しているのだ。尤も、その点では、私の議論も同じだ。

 しかも、これだけは真面目な議論だが、誰が美人とされるかは地域によって全く異なる。日本人が選ぶ日本女性の美人ランキングと、アメリカ人が選ぶ日本女性の美人ランキングは全然違う。これは数多の調査で明らかである。知り合いのアメリカ人は、「松嶋○々子さんや藤原○香さんより、和○アキ子さんの方がずっと美人だと思う。」と常々話している。フランスに暮らす日本女性が「フランスでは、日本ではもてない子がもてる。」と不満を漏らしていたと聞いたことがある。
 美人の基準は国によってまちまちである。時代によってもまちまちである。しかも現代は基準が急速に変化する。しかし、人間の生殖能力がそんなに急激に変化するはずがない。

 このことから、確実に、竹内さんの議論が間違いであることが証明された。

 竹内さんの本は、やはり、トンデモ本である。でも、それでよい。竹内さんの本はどれもとても面白い。真面目にとらなければ、良書ばかりであると誉めてあげてもよい。売れて当然だ。

 ただ、書店には一言言いたい。竹内さんの本を真面目な自然科学書と同じコーナーに並べるのは止めてもらいたい。真面目な学生が、分子生物学の本を買うつもりで手を伸ばし、間違って横にある竹内さんの本を手にとり、それに気がつかぬままレジに持って行き購入してしまったらどうなる。もしかしたらノーベル賞をもらうくらい優秀な学生が、単なるトンデモ本の作者になってしまうかもしれないのだ。これは日本にとっても世界にとっても大変な損失だ。竹内さんの本は、アダルトコーナーに置くか、土屋賢二先生や岸田秀先生の本と一緒に日本ユーモアエッセイコーナーを作り、そこに置いてもらいたい。実際、竹内さんの本を読んで喜ぶのはそういう類の人たちだ。私もその一人だ。



(H14/12記)


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