☆ 体験、表現、理解 ☆

井出 薫

 生の哲学者の一人と称されるディルタイは、体験、表現、理解を重視した。この三つの概念は、正しく、人の本質を示している。

 コンピュータは人の知的活動を模倣する。しかし、コンピュータは体験することも、理解することも、表現することもない。ただ、物理的な信号を取り込み、物理的な信号を処理して、物理的な信号を出力するだけだ。そこには物理的な信号ではなく意味を持つ情報が問題となる体験、理解、表現は存在しない。

 コンピュータは情報処理をすると言われる。だが、本当は情報処理などしていない。コンピュータを使って人が情報処理しているだけなのだ。

 体験、理解、表現は人間特有の出来事と振る舞いを表わす。意味を捉え、意味を理解して、意味を生成する「人」あるいはその「生」という特異な存在、それをディルタイという人は正しく理解し表現している。そこには、生の体験が輝いている。

(H17/3/4記)


[ Back ]



Copyright(c) 2003 IDEA-MOO All Rights Reserved.